営業のお仕事をされている方から「Slack CRM」という言葉を聞いたことがある、という方もいるのではないでしょうか。名前だけ聞くと「Slackに新しいCRM(顧客管理システム)ができたの?」と思うかもしれませんが、実際はもう少し違う仕組みです。今回は、この「Slack CRM」について、パソコン初心者の方にも分かるように整理していきます。
この記事でわかること
- Slack CRMとは何か
- Salesforceとの関係
- Slack上でできる具体的なこと
- 導入にあたっての注意点
結論から言うと、Slack CRMは新しい独立したCRM製品ではなく、「SalesforceのCRM機能やデータを、Slackの中で使えるようにした仕組み」のことです。SalesforceはSlackの親会社にあたるため、この2つのサービスの連携が年々深まっています。
1. これまでの営業の作業の流れ
これまで営業担当者は、次のように複数の画面を行き来しながら仕事をしていました。
- Slackで社内に相談する
- Salesforceを開く
- 顧客を検索する
- 商談情報を確認する
- 内容を更新する
- Slackへ戻って報告する
このように、同じ情報を何度も扱うことになり、地味に手間がかかっていました。
2. Slack上でSalesforceの情報を検索できる
Slack CRMでは、Slackの検索欄からSalesforceのレコード(取引先や商談などのデータ)を直接検索できます。「Salesforce内を検索」という選択肢から、該当する情報をSlack上に表示できるため、わざわざSalesforceを開いて顧客名を検索する手間が減ります。
3. Slack上からSalesforceのデータを更新できる
見るだけでなく、編集権限を持っているレコードであれば、Slack上からそのまま情報を変更することもできます。たとえば、
- 商談のステージ(進捗段階)
- 次に行うべきアクション
- 顧客情報
といった項目を、Slackから直接更新できます。ここで変更した内容は、Salesforce側にも自動的に反映されるため、「Slackに書いた後、もう一度Salesforceにも入力する」という二重の作業を減らせる可能性があります。
4. Slackbotに「更新して」と頼むこともできる
前回までの記事で紹介したSlackbotとの組み合わせも、2026年らしい使い方です。Slackbotが使える環境では、会話形式でSalesforceのレコードを検索・作成・更新できます。
- 「A社の商談を探して」
- 「最近のやり取りをもとに、C社商談の次のステップを更新して」
といった依頼が可能です。ここで重要なのは、Slackbotが勝手に情報を書き換えるのではなく、変更前に必ず利用者へ確認を求める仕組みになっている点です。AIに大事な情報の更新を任せる以上、この「確認してから実行する」という設計は、安心して使うための大切なポイントだと言えます。
5. 「Salesforceチャンネル」という考え方
もう1つ重要なのが「Salesforceチャンネル」です。これは、Salesforceの取引先や商談レコードと直接結びついたSlackチャンネルのことです。
たとえば「A社」という取引先に対応したチャンネルを作っておけば、営業担当・営業マネージャー・技術担当・カスタマーサポートなど、関係者が同じ場所で会話しながら、その場でSalesforceのレコードを確認・更新できます。
これまでは「顧客情報はSalesforce」「相談はSlack」と別々の場所に分かれていたため、「この商談の話、どのチャンネルだったっけ?」という混乱が起きがちでした。Salesforceチャンネルなら、会話とCRMデータを同じ場所で確認できるため、引き継ぎや上司への相談もスムーズになります。
6. 権限管理はSalesforce側のルールがそのまま適用される
「SlackでSalesforceが使えるなら、誰でも全部の顧客情報が見られてしまうのでは?」と心配になる方もいるかもしれません。この点は安心してよい設計になっています。
Slack上で表示・編集できるSalesforceのデータの権限は、Salesforce側の権限設定にそのまま従います。Salesforce側で「この商談は見られない」と設定されているユーザーは、Slackからも見ることができません。これはSlackbotについても同じで、AIだからといって、人が見られない情報を勝手に見られるわけではありません。
7. 導入前に知っておきたい注意点
便利な機能ですが、いくつか注意点もあります。
まず、Salesforceチャンネルなどの機能を使うには、SlackとSalesforce双方の管理者による設定が必要です。個人が「今日から使おう」と思って、すぐ使えるものではありません。会社によっては情報システム部門やSalesforce管理者との調整が必要になります。
また、Slack上で扱えるSalesforceのデータには制限もあります。対応しているレコードの種類に限りがあったり、一部のフィールドはSlackから編集できなかったりするため、「Salesforceの全機能が完全にSlackへ移行した」というわけではない点も押さえておきましょう。複雑な分析やレポート作成では、引き続きSalesforce本体を使う場面が残ります。
8. 導入までのおおまかな流れ
自社でSlack CRMを使い始めたい場合、おおまかには次のような流れになります。
- SalesforceとSlackの両方の契約プランが、連携機能に対応しているか確認する
- 情報システム部門やSalesforce管理者に相談し、連携の設定を依頼する
- Salesforce組織とSlackワークスペースを接続する
- 利用するユーザーやアクセス範囲を設定する
- まずは一部のチームや商談で試験的に使ってみる
- 使い勝手を確認しながら、対象を広げていく
いきなり全社展開するのではなく、まずは一部のチームで試してみて、運用ルール(どの情報をSlackに書き、どの情報はSalesforceだけに残すか等)を固めてから広げていくと、混乱が少なく済みます。
9. 中小企業でも導入する意味はある?
Slack CRMというと大企業向けの機能というイメージを持たれるかもしれませんが、実際には少人数の営業チームでも十分に恩恵を受けられます。むしろ、担当者が1人で複数の顧客を抱えていることが多い中小企業ほど、「入力の手間を減らす」「過去のやり取りをすぐ探せる」といったメリットを実感しやすい面もあります。導入・運用の負担が気になる場合は、まず自社の営業チームの一部だけで小さく試してみるところから始めるとよいでしょう。
まとめ
- Slack CRMは、新しいCRM製品ではなく「SalesforceをSlackから使える仕組み」のこと
- Slack上でSalesforceの顧客・商談情報を検索・更新できる
- Slackbotに話しかけるだけでレコードを更新できる場合もある(更新前に必ず確認あり)
- Salesforceチャンネルで、会話とCRMデータを同じ場所に集約できる
- 権限管理はSalesforce側のルールがそのまま適用される
- 導入には管理者による事前設定が必要
10. HubSpotなど他社CRMとの違いは意識しなくていい?
「うちの会社はSalesforceじゃなくてHubSpotなどの別のCRMを使っている」という方もいるかもしれません。今回紹介したSlack CRMの仕組みは、SalesforceとSlackという、同じSalesforce社が提供するサービス同士の連携が前提になっています。他社のCRMを使っている場合は、それぞれのCRMが提供している連携機能や、SlackのApp連携(外部アプリを追加する仕組み)を別途確認する必要があります。「SlackとCRMを連携させる」という考え方自体は今後の主流になっていくと考えられるため、自社が使っているCRMにどんな連携機能があるか、一度確認してみることをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. Slack CRMを使うのに追加料金は必要ですか?
具体的な料金の仕組みは契約プランによって異なります。Salesforceとの連携機能は上位プランで提供される場合が多いため、詳しくは自社の契約内容や公式サイトでご確認ください。
Q. Salesforceを使っていない会社でもSlack CRMは使えますか?
Slack CRMはSalesforceとの連携が前提の機能です。Salesforceを導入していない場合は、通常のSlack AI機能(要約・検索など)を活用する形になります。
Q. AIが間違った情報でSalesforceを更新してしまう心配はありませんか?
Slackbotによる更新は、実行前に利用者への確認を求める仕組みになっているとされています。とはいえ、重要な情報は更新後も必ず自分の目で見直す習慣をつけておくと安心です。
Q. 導入コストはどれくらいかかりますか?
Salesforce・Slackそれぞれの契約プランや、連携範囲によって大きく変わるため、一概には言えません。まずは自社が契約しているプランで、どこまでの連携が可能か、Salesforce・Slack双方の担当窓口に確認してみることをおすすめします。
次回は、この仕組みによって営業担当者の1日の仕事が実際にどう変わっていくのか、メリット・デメリットの両面から解説していきます。

